去年最後に投稿した記事でPoincaré不等式について書いたので、その続きで今回はlog-Sobolev不等式について軽く&フォーマルに書こうと思う
Markov過程が均衡状態に収束していく様子はある意味で熱伝導方程式のように捉えることもできて、その様子を分散の指数関数的収束で特徴づけるのがPoincaré不等式だと言える
一方、(自分的には)熱の伝導といえば熱力学第二法則、すなわちエントロピーの増大を思い出すが、Markov過程の均衡への収束をエントロピーの観点から特徴づけるのがlog-Sobolev不等式である
ここではエントロピーを以下のように定義する: 測度と関数に対して
log-Sobolev不等式はエントロピーの時間経過による収束率の不等式なので、まずはとりあえず時間で微分してみると、エントロピーとFisher情報量を繋ぐ次の等式が得られる
(de Bruijn's identity) 関数に対して
上式に登場するがFisher情報量で、carré du champ operator を用いてとして定義される
特に、Fisher情報量は常に非負なので、de Bruijn's identityはエントロピーの単調減少性を示している*1
これ以降では、具体例として前回同様Ornstien-Uhlenbeck過程とその定常分布である標準正規分布について考えてみる
まずおさらいとして、Ornstein-Uhlenbeck過程のinfinitesimal generator はと書けるので、carré du champ operator は
また、Ornstein-Uhlenbeck過程はMarkov semigroupが標準正規分布に従う確率変数を用いて
これらを用いると、のFisher情報量は
以上の議論とde Bruijn's identityより、すなわち
(log-Sobolev inequality for the Gaussian measure) 任意の(適当な)非負関数と標準正規分布に対して
ちなみに一般的にFisher情報量はとも表せるので、上の式は任意の(適当な)に対して
一般的にあるMarkov過程と確率分布が「任意の(適当な)関数に対して」を満たすときにlog-Sobolev不等式を満たすと言う
上の例で言えば、Ornstein-Uhlenbeck過程はを満たす、となる
なお、はPoincaré不等式より強い主張であることが知られている
実際、となるを用いてとおけばおよび